こだわり物語Presented by Arts-Eihan

機械装置、医薬品添加剤、食品添加剤、食品品質保持剤

創業以来、47年間連続黒字を誇る、世界トップレベルの医薬製造機械メーカー
~フロイント産業株式会社~

「日本の薬は美しい」

海外渡航中やむを得ず、海外の薬を口にしたとき、 またドラッグストアに並ぶ薬を目にしたとき、実感したことはないだろうか?

筆者がアメリカで目にしたのは、色ムラがあったり、 サイズが大きすぎたり、表面がザラザラ、デコボコしていたり…という薬の数々。

それに比べて日本の薬はどうだろう?色が均一で滑らか。 まったくムラがない。まるで芸術品のように美しいのである!

実は日本には、薬の表面をコーティングする世界最高水準の技術を誇る企業がある。

それが、フロイント産業

同社が1964年にその原型を開発した コーティング機械装置「ハイコーター」は 今や世界の製薬業界で、 薬をコーティングする機械の代名詞となっている ほどである。

「良薬口に苦し…」と感じることも少なくなった理由は?

ここでちょっと、薬のコーティングの仕組みについて学んでみたい。

「通常私たちが飲む薬の表面は、苦みや臭いを包み隠したり、薬を紫外線や湿気から保護したりするための膜で包まれています。そのを施すのが、弊社が開発した機械装置『ハイコーター』。薬以外にもガムやチョコレートの表面への糖衣(シュガーコーティング)などにも使用されています」(フロイント産業 鵜野澤さん)

また錠剤には、飲み込みやすいように、または、胃を通過して、 腸のなかで溶けるといった機能を持たせるために、 糖衣よりも薄い「フィルムコーティング」という膜が施されることがある。
その薄さは何と0.1ミリ以下、数10~100ミクロンの高分子の膜になるのだとか。
まさに、肉眼では確認できないほどの、緻密な膜で覆われているのである。

世界で最も均一で美しいコーティングを可能にした技術

この装置、1回で数百kg~数トンもの原料をコーティングできるが、 一体どのような過程を経て完成するのだろうか?

写真を見るとズバリ、 衣類用の乾燥機にスプレーガンが組み込まれたようなイメージだが…。

1:コーティングドラムと呼ばれる大きな容器が回転。

2:このなかに、コーティングする対象物(薬やガムなどの核部分)の原料を投入。

3:スプレーガンから、コーティングする液を吹き付ける。

4:同時に熱風を吹き付けて、表面を乾燥させて、膜を形成する。

ここで注目すべきは、3、4。
噴霧(スプレー:加湿)をしながら乾燥させるという、 ある意味矛盾 したこの工程では、非常に難しい技術 が必要とされるのである。

また、錠剤1錠の表面積だけを見ると小さいものだが、 錠剤が1度に製造されるのは、何十万~何百万錠!

これだけの大きな表面積に、正確に、 均一にコーティングするためのノウハウとは一体…?

装置の内部で

● 原料を素早く撹拌混合する技術
● コーティングする液体を幅広く均等に吹き付けるノウハウ
● 吹き付けた液を素早く乾燥させる機構

など、

それぞれの要素技術が相乗的に作用することで初めて、 素早く均一に被膜形成することが可能になっているのだとか。

「日本薬局方では、含量均一性という基準が定められていて、 薬一粒一粒で、 品質が異なるようなことがあってはいけません。 もちろん『ハイコーター』ならば、そうした基準もしっかりクリアできます」

また、日本の薬ユーザーの目は、とても厳しいという。

「ちょっとした色や形の違いに敏感で、少しでもいつもと違うと感じられたら、 返品という事態になってしまいます。それだけ厳しい患者さんの目がありますので、 私たちもその期待に応えて行かなくてはいけないと思っています」

安全性や使いやすさも大きな武器に、国内シェアは現在9割以上

「近年、薬の製造現場には、女性のオペレーターさんもが急増しています。 そのことから、工業機械であっても、ユニバーサルデザインという概念に着目。 部品が重くならないよう、 高所作業をしなくても済むようにするなど、使いやすさを最大限に考慮しました」

また、最近では高薬理活性物質といって、 薬の成分がごく微量でも効果が大きいものが増えてきている。 そのため、オペレーターの方々が薬効成分を吸い込まないよう、 安全性を確保できる機能を備えた機器もあるのだとか。

ほかにも、「ハイコーター」には、スタイリッシュなデザイン、 機器のクリーニングのしやすさなど、きめ細かいこだわりが凝縮されている。

そして今後は環境にも配慮し、機器の省エネ化を進めて行くことを目標としている。

製薬現場に革命を起こした1台の機械

フロイント産業の設立は1964年。東京オリンピック開催の年。

その数年前、のちの創業者となる伏島靖豊氏はある製薬会社の工場見学に行き、その作業環境に驚愕した。

「現在、錠剤をコーティングする装置は密閉されているのですが、当時は外部にむき出しの状態。そこに職人の方々がバーナーで温められた装置を用いて、錠剤をコーティングしていたといいます」
そこで伏島氏はひらめいた。

「これから、高度経済成長と共に薬の時代が来るのは確実である」

「もっと効率よく生産できないか?」
「しかも、もっと作業環境を改良できないか?」

「それを実現する機械を自分で作るしかない!

そして友人と共にアイデアを出し合って開発に取り組み、 コーティング装置「ハイコーター」の前身となる 第1号機が完成したという。

だが実はその記念すべき1号機の写真がない…。
それはなぜか?

「1号機が完成すると、早速車に積み込み、一軒一軒製薬会社にデモに回ったといいます。そして幸い、1号機はすぐに売れてしまった。会社をスタートしたばかりで、1号機が売れるか売れないかは重大な問題でしたから。写真を撮る暇もなかったのですね」

その後2号機以降も売れ続け、国内のみならず欧米でも販売されるように。
工業製品としては珍しく、累計1300台も売れるベストセラー商品となった。

さらに、同社の面白いところは、設立当初から錠剤のコーティングに使用する液体も開発し、販売をしているところ。

ここに同社の成功の秘訣が隠されているようだが、それは一体…?

インクとプリンター、コピー機とトナー、ペンとインク

このように、メーカーが優れたハードウェアとソフトウェアを同時に開発し、販売するのは今では当たり前の概念となっている。
しかしこれが50年前となると、状況は違った。

創業者である伏島氏は「どんなにいい装置があっても、それを使う技術と材料がなければ、いいものは作れない」という思想のもと、製薬機械装置の開発と同時に、医薬品添加剤の開発にも取り組んだ。

薬は飲みやすい大きさにデザインされている

「原薬のなかには、耳かき1杯もないほどの微量で効果があるものもあります。しかし、患者さんがそれだけの量を飲むのは難しいので、適度に飲みやすい大きさに加工されているのです。例えばある200mgの錠剤。薬効のある主薬は10 mgしか入っておらず、残りの190 mgは薬の働きを適切にさせたり、保護するために必要な材料が添加されています

ちなみにその医薬品添加剤は、日本薬局方で制限されており、砂糖、乳糖、でんぷんなど、食品で使われるような安全なものが使用されているのだとか。

製薬機械部門と、医薬品添加剤部門、それぞれの技術者が激論を交わし良いモノが生まれる

「当然かもしれませんが、当社が医薬品添加剤を加工する際には、自社の機械装置を利用しています。そのため、実際に装置が使いやすいか? こういう機能が追加できないか? など、医薬品添加剤部門と機械装置部門の技術者同士が知識を共有し合い、意見をぶつけながら開発研究を進めることができます

その結果、生まれたのが数多くの独創的な機械製品と医薬品添加剤なのだ。

ここで忘れてはならないのが、同社の粉体技術

カプセル錠の中に、小さな球状の粒が多数入っているのを見たことはないだろうか?

実はこの粒、“粉”を飲みやすく、溶けやすくするために、粉と粉とをくっつけたり、粉にコーティング処理が施されたものなのである。

絶対混ざらないはずの水と油がサッと混ざる理由は?

この粉体技術。私たちの身のまわりで大活躍している。

「例えば、サッと溶けて当たり前だと思っているカップラーメンの粉、ココア、粉ミルクなど。これらの粉末には本来脂分が多く含まれているので、そのままお湯を入れてもダマになってしまうはずです。しかし、弊社の粉体技術と食品会社のレシピに基づき顆粒にすることで、サッと溶けることが可能になっているのです」

ほかに、コピーやFAXのトナー粉末、パウダーファンデーションをはじめとする化粧品、電池や携帯電話、時計、CDやDVDなどの精密機器の加工にも粉体技術が欠かせない。

そして、同社の造粒装置は国内シェア7割を獲得しているということからも、その技術が多分野で評価され、裏方から私たちの快適な生活を支えていることが分かる。

次は、スイーツから麺類まで、私たちの美味しい幸せを支えるフロイント産業のもう一つの製品分野をご紹介。

食の安心安全第一の時代に先駆けて…

コンビニやデパ地下で売られているバウムクーヘンなどの焼き菓子や和菓子、パンや生麺類などに必ずといっていいほど添付されている四角い紙片。

これは、食品の菌、とくに カビの繁殖を防ぐ効果があると同時に 食品の水分を維持 し、しっとりとした食感を保ってくれる。

本来1週間も保存できない食品であっても、 「アンチモールド・マイルド」 を添付するだけで1~2カ月も品質保持が可能 になるという。

そもそも、同社が食品品質保持剤に着眼したのはなぜであったのか?

「30年前、例えば地方の和菓子屋さんの商品を都内で購入して、食べるということは不可能なお話でした。でも、そうしたニーズの高まりや、スーパーマーケットなどの流通網が改善されたこと、さらに食品の安全安心に関心を寄せる人が増えたことから、食品品質保持剤が待望されるようになったのです」(フロイント産業 河村氏)

開発のヒントはおばあちゃんの知恵袋!?

「昔、生活の知恵で、食パンやおもちは、綿にアルコールをしみこませたものと一緒に置いておいておくと日持ちがするといわれていました。このアイデアをもとに、私たちは、綿のかわりにパルプ、さらには、医薬品添加物としても利用されている『シリカゲル』(乾燥剤)にアルコールをしみこませるなどの試行錯誤を重ねてきました」

そして、この食品品質保持剤「アンチモールド」は、1978年、フロイト産業の粉体技術から誕生した。まさに、しっとりバウムクーヘン、ふんわりパン、モチモチの生麺など、全国の美味しいものが手軽に食べられる時代の到来に、一役買ったのである。

現在までに改良を重ね、最新の食品品質保持剤 「アンチモールド・テンダー」は、 ジェル状のアルコールを使用し、またアルコールの香りをできる限り抑え、低臭化に成功

成分は、間違って口にいれても問題はなく安全なもの、効果の残存状態が目視で分かるものとなっている。

食品品質保持剤の研究に必要な測定器も自社で開発

また食品の日持ちを考える際に、菌の利用できる水分(自由水)を確認することは、とても重要なこと。
しかしながら、当時市販されていた分析装置はとても使いにくいものであったため、「それならいっそ」と自社で開発したのが「水分活性測定器」

こちらは、食品の保存性について重要な要素となる「水分活性値」を、 高精度で測定が可能であるほか、 作業をする上での操作性、メンテナンス性も追求。
ユーザーである 研究者の声を生かし、 “本当に使える”1台を開発した。
まさにここが同社の強味なのである。

今後の目標は、「もったいない」をなくすお手伝い

「現在コンビニエンスストアでは、食品は消費期限時間が過ぎればレジも通せないようになっています。しかし、食品品質保持剤を改良して、せめて数日でも日持ちできるようになれば、相当な廃棄ロスを抑えられるのでは、と考えます。我々の力で、そのお手伝いをしたいですね」

創業以来黒字を維持! その秘訣に迫る

以上みてきたように、フロイント産業は、 機械装置、医療品添加剤、食品品質保持剤という ハードとソフトを組み合わせた技術開発力を武器に、 国内外で高い評価を得てきた。

しかも同社は、1964年の創業以来、1度たりとも赤字に陥ったことがないという。 バブル経済の崩壊、リーマンショックと、 世界経済の混乱をよそに、堅実に歩んでこられたその秘訣はどこにあるのだろうか?

「研究事業がメインですから、当然失敗もあります。しかし、実業以外で投資などの不確実なものに頼らない、すなわち、価値が減損するものを持たないという思想が根底にあるからだと思われます。バブル経済全盛期には各方面からさまざまな誘惑もありましたが、そこだけは全くブレませんでした」

また同社は創業当初より、自社工場を持たない開発型企業だ。まさに現在注目されているファブレス(工場を持たないことで設備投資などのリスクを軽減し、安定した事業を行う)というビジネスモデルを、50年近く前より実現していたことになる。

しかし、どんなに優れた経営者にも運、不運というものがある。 やはり、創業者である伏島氏が、薬という分野への進出を考えた時点で、 今の勝利は決まっていたのかもしれない。

目覚ましい海外進出と製薬事業への挑戦

フロイント産業は、2010年には、アイルランドに子会社「FREUND PHARMATEC LTD.」を設立。こちらをヨーロッパの拠点とする上、同社が誇る技術を駆使して、新たなる製剤技術を手掛ける計画がある。

また、北米、中南米マーケットは、米国アイオワ州の子会社「FREUND-VECTOR CORPORATION」を拠点とし、フロイント産業本体は、中国、インド、東南アジアの巨大マーケットに、積極的に進出して行く予定である。

フロイント産業の「フロイント」とは、ドイツ語で“友達”という意味。 友達同士、知識や技術を集結して創立された というところが会社名の由来である。

熱き友情の結晶は、堅実に、着実に前進し、全世界の人々の快適な暮らしを支えている…。

写真:フロイント産業株式会社
http://www.freund.co.jp/

会社概要

フロイント産業株式会社
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フロイント産業株式会社

住所 〒169-0072
東京都新宿区大久保1-3-21
設立 1964年4月
資本金 10億3560万円
従業員数 187人
URL

http://www.freund.co.jp/

医薬品、食品、化学等の業界向け造粒・コーティング装置およびプラントエンジニアリングと医薬品添加剤、食品品質保持剤、栄養補助食品等の開発・製造販売、並びに治験薬製造の受託および仲介